東京東部のゼロメートル地帯と水害リスク
ここでは、東京東部のゼロメートル地帯に広がる広域な市街地(以下、「広域ゼロメートル市街地」)が抱える水害リスクと、現在求められている備えについて紹介します。

ゼロメートル地帯とは
ゼロメートル地帯とは、地盤の高さが東京湾平均海面(A.P.±0m)前後、またはそれより低い地域を指します。こうした地域では、堤防や水門、排水施設などが機能してはじめて、安全な生活が成り立っています。
東京東部の低地では、河川や海の水面より地盤が低い場所が広く分布しており、ひとたび堤防の損傷や越水、排水機能の低下が起きると、広い範囲で浸水が発生するおそれがあります。
なぜゼロメートル地帯になったのか
東京東部では、明治時代以降の工業化と都市化に伴う地下水のくみ上げによって地盤沈下が進み、海面水位より低い土地が広範囲に形成されました。こうして、現在の広域ゼロメートル市街地がつくられました。
現在は地下水利用の規制などにより大規模な地盤沈下は抑えられていますが、低い地盤の上に住宅地や都市機能が集積している構造そのものは変わっていません。そのため、ゼロメートル地帯の水害リスクは、今も東京の重要な防災課題のひとつです。
東京東部低地帯の特徴
東京東部低地帯では、荒川、江戸川、中川、新中川、綾瀬川などの河川に囲まれた低地に、多くの住民と都市機能が集中しています。日常の安全は、堤防、水門、排水機場、護岸などの治水・高潮対策施設によって支えられています。
東京都は、東部低地帯で高潮防御施設の整備、スーパー堤防等の整備、耐震・耐水対策などを進めています。主要河川では防潮堤等が概成している一方で、さらなる安全性向上に向けた整備が継続しています。
現在の水害リスク
近年は、気候変動の影響により、短時間強雨の激甚化、台風の強大化、海面上昇などが懸念されており、水害リスクの前提条件そのものが変わってきています。東京都は、気候変動を踏まえた河川施設のあり方を整理し、高潮対策についても新たな整備方針を策定しています。
東京都は、将来の高潮対策の前提として、海面上昇と台風の強大化を見込んだ整備目標を掲げています。
葛飾区では、最新の水害ハザードマップが公開されており、区内の水害リスクや避難の考え方を確認できます。
大規模水害が起きた場合の影響
ゼロメートル地帯では、浸水が始まると自然に水が引きにくく、排水機場などによる機械排水に大きく依存します。そのため、広い範囲で浸水が長期化するおそれがあります。
大規模水害時には、住宅の浸水だけでなく、停電、断水、トイレの使用制限、通信障害、物流の停滞、医療へのアクセス低下など、生活全体に深刻な影響が及ぶ可能性があります。
また、高層住宅の上階にとどまって浸水そのものは免れても、エレベーター停止や物資不足によって孤立する場合があります。そのため、「建物の中にいれば安全」とは限らず、生活継続の視点での判断が必要です。
いま重要なのは広域避難の発想
広域ゼロメートル市街地では、近くの避難所へ行くだけでは十分でない場合があります。大規模水害が予測される場合は、区外の安全な親戚・知人宅、勤め先、宿泊施設などへの広域避難を考えることが重要です。
また、超巨大台風の上陸や大雨が予測される場合は、数日前の段階で広域避難の判断を意識し、原則として地域全体で早めに避難行動を取る考え方が必要です。
この考え方は、葛飾区を含む東京東部の低地帯でも参考になる重要な視点です。自宅の浸水深、建物の構造、家族構成、備蓄状況を踏まえ、在宅避難で本当に安全を確保できるかを事前に判断しておく必要があります。
日頃から確認しておきたいこと
・自宅や勤務先が、どの河川の氾濫で浸水する可能性があるか
・想定浸水深が何メートルか
・在宅避難が可能な建物かどうか
・区外を含めた避難先を事前に確保できるか
・水、食料、携帯トイレ、医薬品、電源などを数日分以上備蓄できているか
・河川水位、気象情報、避難情報をどこから入手するか
水害時の避難は、発災後ではなく発災前の判断が重要です。特に広域ゼロメートル市街地では、「逃げ遅れないこと」と「長期浸水に巻き込まれないこと」が大切です。
地域で進めるべき取り組み
東京都は、東部低地帯で高潮対策、堤防整備、耐震・耐水対策を進めていますが、ハード対策だけでリスクをゼロにすることはできません。そのため、住民、町会、NPO、学校、企業、行政が連携し、実際に行動できる避難計画をつくることが重要です。
これからは、ハザードマップ、リアルタイムの河川情報、デジタル地図、3D可視化なども活用しながら、自分たちのまちの危険性を具体的に理解し、地域で共有していくことが求められます。
この地域に住む私たちが持つべき意識
ゼロメートル地帯で暮らすということは、堤防や水門などの防災インフラに日常的に守られているということでもあります。その前提を正しく理解し、平時から備えることが、被害を減らす第一歩です。
広域ゼロメートル市街地の防災では、「自分の地域は大丈夫だろう」ではなく、「どの条件になれば、いつ、どこへ避難するか」を具体的に決めておくことが重要です。その積み重ねが、安全で快適な街づくりにつながります。
