街づくりニュース 2026.03 vol.29+30
街づくりニュース vol.29+30(2022・23年度総集編)詳細まとめ|NPOア!安全・快適街づくり
『街づくりニュース vol.29+30』は、NPO法人ア!安全・快適街づくりが2026年3月に発行した2022年度・2023年度の活動総集編です。29号の発行が遅れたため、30号と合本としてまとめられました。
- 発行主体: 特定非営利活動法人 ア!安全・快適街づくり
- 発行時期: 2026年3月
- 対象期間: 2022年秋〜2024年春の活動
- 活動エリア: 東京都葛飾区新小岩北地区(海抜ゼロメートル地帯)
- 公式サイト: http://www.banktown.org/
理事長・成戸寿彦氏の巻頭言では、29号分(第15回輪中会議、副読本作成、治水施設見学会、都市計画学会受賞など)と30号分(第16回輪中会議、出前授業の新制度、広域治水交流、各種表彰など)の構成が整理されています。
NPOア!安全・快適街づくりとは
東京都葛飾区新小岩北地区を中心に、「防災“も”街づくり」をキャッチフレーズに活動する特定非営利活動法人です。行政と地域住民の橋渡し役として、次の取り組みを進めています。
- 大規模水害を想定した輪中会議の開催
- 小学校・保育園・中学校向け出前授業・防災教育
- 浸水対応型市街地構想(高台まちづくり)の推進支援
- 共助支援アプリ「天サイ!まなぶくんⅡ」の開発・普及
- 荒川流域の広域治水に関する交流・見学会
NPO設立から22年を超え、高齢化が進む一方、かつて出前授業を受けた中学生が講師側に回るなど、世代を超えた担い手の循環が生まれています。
目次(本誌の構成)
- 巻頭言・令和4年度/5年度の活動結果
- 第15回輪中会議(2022年)
- 行政からの寄稿(線状降水帯対応・広域避難)
- 荒川流域訪問・交流記
- 事務局から2022(学会賞・出前授業・副読本)
- 第16回輪中会議(2023年)とワークショップ
- 事務局から2023(表彰・広域治水・各種報告)
- 新小岩北地区の取り組み年表・表紙の書の紹介
令和4年度(2022年度)の主な活動
1. 第15回輪中会議|親水・浸水を地域社会で考える
開催日: 2022年10月15日
会場: にこわ新小岩 多目的ホール(ハイブリッド開催)
参加者: 会場約60〜65名、オンライン4名、YouTube視聴約40名
テーマは「親水・浸水 × まちづくり・ひとづくり × 近所・近助〜“親水”を地域社会で考える〜」。コロナ禍でWeb中心だった第14回の反省を踏まえ、地域性と専門性の両立を目指した対面中心のハイブリッド形式で実施されました。
会場レイアウト「金魚鉢」方式
東京大学・加藤孝明教授の提案により、中央に発言者用テーブルを置き、周囲に間隔を空けた椅子席を配置。360度カメラで発言者をスクリーン表示し、感染対策と議論の可視化を両立しました。レイアウト検討にはCGによる複数案のシミュレーションが用いられています。
第1部:話題提供
- 加藤孝明教授(東大・NPO理事): NPO活動のレビューと気候変動に対応した浸水対応型市街地構想
- 荒川下流河川事務所・出口所長: 水害の激甚化と流域治水対策
- 葛飾区・情野危機管理部長: 浸水対応型市街地構想の詳細と内水氾濫対応
第2部:活動報告と意見交換
上平井中学校地域防災ボランティア部、出前授業講師、市民消火隊に加え、初めて参加した方々の報告が特徴でした。
- 大東文化大学防災研究グループ: 2019年台風19号で被災した東松山市(荒川中流)の経験。下流を守る上中流の役割を共有
- 倉敷市真備町・金藤氏: 2018年西日本豪雨でのバックウォーター現象による全域浸水の体験と啓発活動
- 東新小岩3丁目アーバンライフ自治会: 垂直避難受け入れ協定の現実的課題(滞在スペース・物資の限界)
- 葛飾区社会福祉協議会: 災害支援三者交流会のネットワークづくり
加藤教授のまとめでは、①出前授業による縦のつながり(40年後も続く人材循環)、②ボート訓練など「楽しさ」を伴う活動の広がり、③被災地・他地域との交流の重要性が強調されました。
2. 小学校出前授業・中学校部活支援(令和4年度)
葛飾区「地域活動団体助成事業」を活用し、「親子で語り継ぐ大水害時の避難について」をテーマに実施。東日本大震災を教訓に、命を守る一刻も早い避難を呼びかける活動です。
対象校・実施概要
| 区分 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 小学校出前授業 | 二上小・上小松小・小松南小・上平井小・松上小(3〜6年生) | 水害時の早めの避難、浸水・親水の理解 |
| 保育園講演 | うらら保育園(保護者・教職員) | 水害への備え(中村講師ほか) |
| 中学校支援 | 上平井中学校 地域防災ボランティア部 | 街歩き、学芸発表会、副読本づくりへの参画 |
児童・生徒が高校生・大学生となり講師を務める好循環が生まれつつあり、令和5年度からは葛飾区の新設制度「防災活動団体助成事業」へ移行しました。
3. 出前授業用「副読本」の作成
NPO設立20周年記念事業として、関東地域づくり協会の助成により小学生向け出前授業副読本を作成。事務局小委員会、講師、大・高・中学生が参加し、東京大学生産技術研究所・南貴久氏が全文統一を担当しました。
副読本作成に先立ち、以下の治水施設・被災地を見学し、情報を収集しています。
- 首都圏外郭放水路(通称:防災地下神殿)
- 荒川彩湖公園・荒川第一調節池
- 宗岡第二横堤、秋ヶ瀬取水堰
- 令和元年台風19号被災地・東松山地区
4. 荒川中流域 治水施設見学会(令和5年1月28日)
参加者: 総勢33名(上平井中学生、東新小岩7丁目町会員、葛飾区防災担当、大学生NPOスタッフなど)
助成: 一般社団法人関東地域づくり協会 公益助成金
地下約60mの防災地下神殿、龍Q館、荒川彩湖公園、秋ヶ瀬取水堰、第一調節池などを巡り、上流・中流の治水が下流(葛飾)を守る関係性を親子・地域で学びました。副読本の資料収集と災害学習が主目的です。
5. 日本都市計画学会 計画・設計賞を受賞
表彰日: 2023年5月26日
会場: 東京大学伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール
受賞作品名: 「浸水対応型市街地構想、及び、それに至る取り組み―気候変動への市街地の適応(高台まちづくり)の展開への布石―」
受賞者:
- 加藤孝明教授(東京大学生産技術研究所)
- 塩崎由人氏
- 故・石川金治氏(NPO初代理事長)
- NPOア!安全・快適街づくり
- 葛飾区
- 新小岩北地区連合町会/新小岩北地区ゼロメートル市街地協議会
ハード構想とソフト対策を組み合わせた浸水対応型市街地の提案が、葛飾区の公式構想となり、東京都・国土交通省の政策にも波及した点が評価されました。計画・設計賞は石川賞に次ぐ価値ある賞です。
6. 共助支援アプリ「天サイ!まなぶくんⅡ」
令和3年度に開発された共助支援アプリ。コピーは「近所で近助」。モデル地区・東新小岩7丁目町会で防災訓練や子ども祭りを通じた普及を進め、かつしか祭り等でもデモを実施しました。
本号時点ではサーバー維持費の課題から一時中断し、全体像の記録は次号(31号)特集に回す方針が示されています。
行政からの寄稿|葛飾区の水害対策
線状降水帯への対応(情野正彦・葛飾区)
気候変動により線状降水帯のリスクが高まる中、葛飾区は発生可能性が示された場合の対応を新たに整理しました。
- 発生の可能性が示された場合: 一時滞在施設の開設準備。夜間〜明朝の警報級降雨予測時は19時時点で開設決定・周知
- 大雨・洪水警報発令時: 17時前発令ならその段階で開設決定
- 顕著な大雨情報+レーダーで影響確認時: 安全・安心メール等で直ちに2階以上への垂直避難を促す
要配慮者こそ2階以上の居住を推奨するなど、住まい方の見直しにも言及しています。
大規模水害からの広域避難(玉川俊樹・葛飾区)
江東5区(葛飾・墨田・江東・足立・江戸川)では、複数河川の氾濫や高潮時に浸水深5m以上・浸水継続2週間以上・約250万人被害が想定されます。平成28年より「江東5区広域避難推進協議会」で検討を推進。
- 水害ハザードマップ説明会・出前講座での周知
- 縁故避難・ホテル避難など自主的な広域避難先の確保呼びかけ
- 国立オリンピック記念青少年総合センター等、16法人34施設と協定
- 警戒レベル5時の高速道路高架部一時利用とバス輸送の協定
警戒レベル4「避難指示」までの事前避難が基本であり、「広域避難」は通常の避難情報とは別物であることの認識が求められます。
令和5年度(2023年度)の主な活動
1. 第16回輪中会議|2023 地域の未来を語る会
開催日: 2023年10月28日
会場: 新小岩北地区 大ホール(対面)
参加者: 約65名(町会の防災実務者が中心)
輪中会議12年目・通算16回目。従来の「経験の共有」から、「地域の未来を語る」場へと転換。テーマは「防災活動のこれまでの到達点を確認し、新たな取り組みの準備を行う」。
ホップ(課題抽出)→ステップ(課題展開)→ジャンプ(課題解決)の発展を見据え、6グループのワークショップを中心に運営。加藤教授の基調講演と情野部長の話題提供を素材に、自助・共助・公助の現状と短中長期課題を討議しました。
ワークショップで出た主な論点
岸田暁郎氏グループ(担い手育成)
- お祭りなど日常活動への防災要素の組込み
- 保育園・福祉施設・まちづくり団体との連携
- 地区防災計画の作成、要配慮者の見守り・避難支援体制
- 出前授業による次世代担い手の好循環とコーディネーター役の拡充
稲葉美哉子氏グループ(共助・関係づくり)
- BCP(事業継続計画)の重要性(令和6年度義務化を踏まえ)
- 個人・会社・町会の備蓄見直し(ポータブル電源など)
- 避難所運営の担い手意識、福祉避難所整備の課題
- 平時からの関係づくり(イベント×防災で「種を蒔く」)
Old Soldierグループ(宇賀俊夫氏報告)
長年地域防災に携わるメンバーによる討議結果が詳報。東大加藤研のキム・ジュン氏がチャート形式で全体を整理しています。
2. 葛飾区防災活動団体助成事業への移行
従来の地域活動団体助成から、令和5年2月施行の「葛飾区防災活動団体事業費助成金交付要綱」へ移行。防災人材育成・意識啓発に特化し、出前授業に適した制度です。
新制度の利点
- 活動に必要な費用を負担強要なく得られる
- 申請から助成までの期間が短縮
- 目的に応じた弾力的な変更が可能
- 講師・事務方の交通費実費が認められる
- 事前仮払いが可能(零細NPOに有利)
- 副読本・オリジナル「避難カード」の印刷費が対象
タイトルは『親子で語り継ぐ浸水・親水〜水害時の対応〜』。保育園1園・小学校5校・中学校1校で実施し、1コマ45分から2コマ90分へ拡充する学校も増加。講師陣自作の「避難カード」は、ゲーム感覚で避難経路を選ぶ訓練教材です。
3. かつしかボランティアまつり(2023年11月19日)
会場: ウェルピアかつしか
報告: 古川修(NPO事務局)
「天サイ!まなぶくん」および「天サイ!まなぶくんⅡ」の体験コーナーを古川・山形が運営。111人超が来場し、赤旗→白旗の変化をマップ上で体験。災害時に役立つアプリとしての評価が多く寄せられました。
4. 第72回東京都社会福祉大会で表彰(2023年12月22日)
東京都社会福祉協議会から地域福祉支援貢献団体として表彰。受賞約400団体を代表し、成戸理事長が壇上で活動を紹介しました。
- 輪中会議
- 小学校への出前授業
- 「天サイ!まなぶくんⅡ」(近所で近助)
キャッチフレーズは「防災“も”街づくり」。
5. 広域治水への交流事業(関東地域づくり協会助成)
荒川の上流・中流・下流で活動する団体・住民の連携を深め、被害最小化を目指す事業。計55名が参加しました。
| 回 | 日程 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 第1回(上流) | 2024年2月10日 | 埼玉県立川の博物館、長瀞での水上視察・水害跡見学、学識者講義 |
| 第2回(下流) | 2024年3月24日 | 荒川知水資料館、荒川ロックゲート、岩淵水門(青水門)見学。中学生・OB・教員も参加 |
甲武信岳から東京湾までの1/1000立体模型などで荒川全体の治水を俯瞰し、世代を超えた定期交流の必要性が確認されました。
6. その他の令和5年度報告
- うらら保育園講演会: 保護者・保育士向け水害備えの講演
- 上平井中学校地域防災ボランティア部: 学芸発表会、荒川上流域訪問
- 荒川流域防災住民ネットワーク2023: 防災アイディア交換会に参加。台風19号体験談、外国人避難の課題、ワークショップ等
- ハード事業の動向: 新小岩公園高台化、緩傾斜堤防、西新小岩3丁目高規格堤防は具体化に至らず、継続注視
次号(31号)予告
次号の主な予定内容は以下のとおりです。
- 第17回輪中会議(2024年6月1日)
- 第18回輪中会議(2024年度中)
- 新中川耐震補強工事現場視察(2024年8月8日)
- あらかわ号による荒川下流域視察(2024年8月29日)
- 特集:「天サイ!まなぶくんⅡ」の全体像と町会への活用(2019年〜)
表紙・裏表紙の写真と書について
表紙・裏表紙には、中川七曲りの変遷(1905年・1909年・1958年)、学生が構想した2058年の新小岩北地区将来像、中川テラスのユリカモメ、荒川の干潟とスカイツリー、葛飾ハープ橋、水鳥やツクシなど、地域の水辺と風景の写真が用いられています(一部・古川撮影)。
表紙の書は故・石川金治初代理事長によるもの。「人を育みし川、中川」の詩情と、「老驥千里を志す」の志が込められ、2016年に惜別した先人たちの想いが今も活動に受け継がれています。
新小岩北地区における取り組みの系譜
本誌末尾には、新小岩北地区における防災まちづくりの取り組みを時系列で整理した年表が掲載されています。ゼロメートル市街地協議会、輪中会議、出前授業、浸水対応型市街地構想など、地域とNPO・行政・大学が積み重ねてきた歩みを一覧できます。
本号から読み取れるポイント
- 輪中会議の進化: 経験共有型から、ワークショップによる「地域の未来を語る」課題解決型へ
- 人材の循環: 出前授業→中学防災部→高校・大学講師→地域の担い手という縦のつながり
- 制度の最適化: 葛飾区「防災活動団体助成」への移行で、息の長い出前授業が可能に
- 広域の視点: 荒川上下流の交流により、流域治水を住民レベルで実感
- 政策への波及: 浸水対応型市街地構想が学会賞を受賞し、区・都・国の政策に接続
- ソフトとハードの両輪: 高台まちづくり等のハードと、共助アプリ・教育・関係づくりのソフト
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特定非営利活動法人 ア!安全・快適街づくり


