活動の年次記録

平成30年度定期総会は恙なく終了 ―記念講演は第58次南極観測越冬隊長の岡田氏―

平成30年度定期総会は恙なく終了

―記念講演は第58次南極観測越冬隊長の岡田氏―

~南極越冬隊の危機管理について~

 

当NPOの平成30年度定期総会は6月24日、日曜日に新小岩北地区センター・ホールで開催されました。恒例となった講演は東新小岩在住で、第58次南極観測隊越冬隊長を務めて本年3月に帰国された国立極地研究所准教授の岡田雅樹氏による「南極越冬隊の危機管理について」と題する講演でした。その後評議員会、理事会に引き続き総会が行われ、予定された議案は全て提案通り承認されました。会場にはNPOが購入したエンジン付きゴムボート、「しんすい!まなぶ号」が展示され、あわせて講師の岡田南極越冬隊長に激励のために送られ、越冬してきた寄せ書き入りの旗も展示され、和やかな雰囲気のうちに総会は開催されました。

 

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岡田氏講演の要旨は次の通りです。

第58次南極観測隊越冬隊長として32名の隊員と共に1年間越冬生活を送ってきました。今回の活動は観測系が4分野の専門家からなる14名で100余りのテーマをもって観測活動に従事し、これを18名の設営系メンバーがサポート、全体を隊長が統括する形で行われました。特に従来から行われているオーロラ観測やペンギンの個体観測などに加えて、10年ほど前に1度行われた3000mに及ぶ氷床を地表に到達するまで掘削し、氷のコアの回収を再度ドームふじ基地で実施しました。これは80~100万年前の地球の大気の状態について観測データを得ることで、過去の地球環境の変動に関する情報を得るためです。今後も新たなドーム基地を設けてそこでのコア掘削を行い、情報の精度を上げていく予定です。また、基地周辺に何十、何百とある湖沼の中の生態系観測データを得る作業も行っており、湖の底に眠っている原始の地球環境を調べようとの活動を行いました。湖はそれぞれ個性を持っており、生態系に違いがあるので各国の観測隊も力を入れている分野です。

本日はNPOの皆さんへの講演なので南極越冬隊の安全管理、危機管理についてお話したいと思います。南極で恐ろしいのは火事です。それは消火のための水がないからです。このため毎月1回消火訓練を行うと共に、類焼を防ぐために建物と建物の距離を充分とっています。なお、建物と建物の間はブリザード襲来時の救助用にライフロープでつながれています。

 

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次に、漏油事故の防止のための対策をとっています。これは南極の環境に悪影響を与えないために必須なことです。いうまでもなく、隊員の健康維持は重要なことです。隊員は「白瀬」が再度接岸する11月までの10ヶ月間島から抜け出せません。この間全員が健康を保ち、怪我もせずに過ごすことは容易なことではありません、医師は2名いますが、病気にかからないためには隊員の健康に対する自己管理が重要になってきます。また、事故を防ぐためには安心・安全のための各種の行動指針を遵守して行くことが必要です、特に野外活動を行う時は予め行動計画書を提出し、出先では本部との通信連絡を密にし、それでも計画書に記載された時刻までに戻ってこない時にはレスキュー隊の派遣も含めて対応をとるようになっています。いずれにしても通信インフラの整備は重要です。勿論出発前に国内で訓練も充分行っていますが、現地の環境ははるかに厳しいものがあるので、現地での消火訓練、負傷者の搬送訓練、救急救命訓練など各種訓練は欠かせません。この間、隊長は国内との連携も密にし、緊急事態発生時のマスコミ対応も予め考えておく必要があります。幸い、今回の越冬中は大過なく、無事に帰国できたのは何よりとのことでした。

講演後現地の食生活や食料事情、隊員の排泄物の処理法、採集した鉱石等の持ち帰り問題、マイナス30度の屋外で人体が受ける影響、氷床掘削で採取されたコアから得られた温暖化の状況と今後の見通し、太陽フレアの影響如何など多くの質問が出て大変興味深い講演でした。映像を使って分かりやすく説明いただいた岡田氏に感謝する次第です。

 

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次いで評議員会・理事会・総会が行われました。

 今年も東新小岩五丁目町会長でNPOの副理事長でもある青柳勇氏が司会を務めました。冒頭に明治大学名誉教授で元東京都副知事の青山佾氏からの祝辞が披露されました。

次いで評議員会に入り、東新小岩七丁目の民生委員の竹本評議員が評議員会の議長に指名されました。議長の要請で成戸理事長が挨拶に立ち次のような挨拶がありました。

成戸理事長の挨拶は次の通りです。

昨年度はNPO設立15年の年だったのでシンポジウムを行ないました。丁度カスリーン台風襲来70年の節目の年であったため、「災害に学ぶ」というタイトルで開催し、多くの方の参加を得て盛会でした。

今年も輪中会議や出前授業は実施する予定ですが、既に始まっている事業もあります。6月10日には新小岩北地区連合町会主催のエンジン付きゴムボートを使った水防訓練があり、NPOも急いで購入したボートで参加しました。ところが搬送中に穴が開き修理したり、操船中にガス欠となり消防団に救助してもらうなどご迷惑をかけ申し訳ありませんでした。ただ、自分でやってみないと分からないことも多く、得難い経験をしたと思っています。このボートは連合町会の皆様に緊急時やそれに備えた訓練時に利用していただくために購入したものであり、その取扱いについて近日中に連合町会長と協定を結ぶ予定です。

今年もう一つ考えているのはホームページの見直しです。昨年の総会でご承認を得た定款の一部改正は、その後11月に東京都の認証を得て発効、同月末には登記も完了しました。変更された定款と現在の活動に照らしてホームページを見直してみると、修正すべき箇所も多いので多少時間をかけてホームページの再整理を行なおうと考えています。キーワードは「浸水と親水」です。浸水にしっかり備えながら親水も忘れずに取り組んでいく所存です。引き続きご支援のほどお願い申し上げます。

 

次いで議案審議に入り、第1号議案「平成29年度活動結果」、第2号議案「平成29年度活動決算」と監査報告、第3号議案「平成30年度活動計画」、第4号議案「平成30年度活動予算」が上程され、夫々議案説明と質疑応答の後、提案通り承認されました。なお、今回の総会で行われた質疑応答の内容は次の通りです。

 

質問 1→ 配布された街づくりニュースは年々厚くなり、内容も充実しているが、編集担当として苦労話を伺いたい

回答  →街づくりニュースは皆さんからいただいた原稿をできるだけそのまま掲載するように努力している。年々掲載記事も増え厚くなって費用も増加しているが、内容は充実したものとなっている。いつも原稿が揃うのに時間がかかり、印刷がぎりぎりになるが、今年は6月10日に行われた連合町会主催の水防訓練の際の「しんすい・まなぶくん号」のパンク修理やガス欠時の消防団による救助場面も表紙裏に掲載することが出来た。これも塩崎、南両氏の素早いサポートによるものである。この他裏表紙には塩崎さんの郷里での結婚式の写真もあり、新郎新婦が川を船で行く写真がある。こんなことも中川七曲がりで出来たらと考えている。また新婚旅行先の欧州での水辺の写真も提供していただいた。表紙には今日もマイクを持って会場を走っている古川ジュニアが川辺のテラスで遊ぶ弟を撮った写真も掲載されている。今後もジュニアのカメラマンとしてのサポートを期待している。是非楽しんで読んでいただきたい。

 

質問 2→NPOの事業に「出前授業」があり、上小松小でも6年生を対象におこなわれたが、この事業の始まったきっかけ、授業の目的、内容、効果は何か。また授業のこれからについて知りたい。

回答 2→この授業は:毎年葛飾区が公募する「地域活動団体事業費助成制度」に応募し、選定されて行われているものである。きっかけは前の副理事長、故徳倉真治氏が消防博物館で「稲村の火」を見て高台への避難の大切さを痛感し、その後発生した東日本大震災における「釜石の奇跡」を聞いて故石川理事長が行っていた松上小での「大災害時の避難教育」をさらに拡充し、広めなければならないと考えたからである。

      目的は新小岩北地区小学校の児童生徒が、大地震や台風で万一中川の堤防や護岸が決壊した時「命だけでも助かる」ために「てんでんこ」でも良いからいち早く安全で高い所へ避難するよう、「親から子に伝え、普段より家庭で話し合う」習慣をつけてもらうことにある。

「出前授業の内容」は、地元町会長さんや役員の方を始め、東京大学・芝浦工業大学の先生方と地域の歴史愛好家の方が講師になって、「この地域は、なぜいち早く非難しければならないのか、なぜゼロメートル地帯になったのか、新小岩の発展とまちづくり、川の怖さと恵み・・・」などを教えている。

効果については、毎年各小学校では決まった学年の児童生徒がこの「出前授業」を受けている。例えば松上小では3年、5年、6年と学年が進むにつれて講師も授業内容も変わっていく。そして卒業までに新小岩を深く知り、一旦大水害が発生した際に各学校で行っている避難訓練と相まって、自分で適宜・的確に判断し、行動するようになる。

また、避難について家庭で親子が話し合い、日頃から親は子の、子は親の行動が互いに分かり合え、いつでも連絡が取りあえるようになり、こうした話し合いが行われると、各家庭で語り継がれるようになることが期待されている。

果たすべき役割として、この出前授業を続けると、いずれ生徒が学生、そして社会人になり、親へと成長する間に大水害が発生した時に授業の効果が発揮され、家庭から地域そして高齢者や病弱者への助け合いにつながっていくことになる。

これからも「出前授業」が継続・定着し、更に、今の上平井中へのクラブ活動支援から、新小岩中も加わった生徒全体に、その授業が拡がって行くことを期待している。

 

総会終了後30名あまりの方が参加して交流会を開催しました。地元の皆さんも多く参加され、和やかなひと時を送るることが出来ました。今年も気分も新たに皆様と共に「浸水と親水」をキーワードに活動に取り組んでいく所存です。皆様方の一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

以上

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