街づくりニュース 2023.03 vol.28

葛飾区・新小岩北地区の水害対策とまちづくり最前線|NPOア!安全・快適街づくりニュース vol.28

資料名: NPOア!安全・快適街づくりニュース vol.28
特集: NPO設立20周年 & 輪中会議10周年
内容: 活動報告、輪中会議、出前授業、行政・地域寄稿、荒川流域交流、年表 ほか

葛飾区・新小岩北地区は、荒川と中川に挟まれた海抜ゼロメートル地帯です。大規模水害時には広範囲・長時間の浸水が想定される一方、地域・NPO・行政・研究者が20年以上にわたり、ハードとソフトを組み合わせた防災まちづくりを積み重ねてきました。

本ページでは、NPO法人ア!安全・快適街づくりが発行する機関誌『街づくりニュース』vol.28(設立20周年・輪中会議10周年記念号)の内容をもとに、水害対策とまちづくりの最前線をわかりやすくまとめます。詳細はページ上部のPDFをご覧ください。

この記事でわかること

  • 新小岩北地区が抱える水害リスクとゼロメートル市街地の課題
  • NPO「ア!安全・快適街づくり」20年の活動の柱
  • 輪中会議の成果と、今後の2.5層再編の方向性
  • 流域治水・浸水対応型建築・広域避難など行政の最新施策
  • 町会実践、共助アプリ、出前授業、次世代継承の取り組み
  • 注視すべきハード事業(高台化・緩傾斜堤防・高規格堤防)

新小岩北地区とは|ゼロメートル市街地の水害リスク

新小岩北地区は荒川・中川沿いに広がる海抜ゼロメートル地帯です。江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)全体では200万人を超える人々が同様のリスク下にあり、広域避難・浸水対応型市街地・流域治水が共通のテーマとなっています。

関東は古来、利根川東遷・荒川西遷、荒川放水路、治水ダム、地下調節池など、水害と戦いながら都市をつくってきました。気候変動により水災害が激甚化・頻発化するなか、地域の備えの重要性はますます高まっています。

NPOア!安全・快適街づくり|20年の活動の柱

2002年に設立されたNPO「ア!安全・快適街づくり」は、新小岩北地区を拠点に、住民・町会・行政・大学等が協働する防災まちづくりを続けてきました。vol.28は設立20周年・輪中会議10周年の記念特集号です。

主な活動の5本柱

輪中会議
2012年開始。木曽三川の「輪中」にならい、水害を意識した地域文化と多様な担い手のネットワークを形成。

出前授業・部活支援
地域小学校での防災授業、上平井中「地域防災ボランティア部」支援。10年超の継続で新小岩地区の小学校へ拡大。

共助支援アプリ
「天サイ!まなぶくんⅡ」。赤旗(救助要請)・白旗(救助可能)・オレンジ旗(追加支援)で町会単位の共助を可視化。

ハード計画の監視・提言
新小岩公園高台化、緩傾斜堤防、西新小岩3丁目の高規格堤防などの進捗フォロー。

NPOのBCP
事務局の高齢化を踏まえ、総会・会計・出前授業・輪中会議等のマニュアル化と継承を推進。

コロナ禍ではZOOM・ハイブリッド開催を活用。2022年度以降は感染対策に留意しつつ、「地元回帰」を掲げて対面中心の活動再開を進めています。

輪中会議10年|到達点とこれからの2.5層構造

輪中会議は、①多様な人々の交流、②地域で活動するコアメンバーの相互触発の場として機能してきました。出前講座の拡充、中学校部活との連携、共助アプリ開発などの後押しにもなっています。

一方で、コロナ後の参加者層の変化、初心者とベテランの情報格差、情報共有に時間を取られ議論が短くなる、といった課題も明らかになりました。東京大学生産技術研究所の加藤孝明教授は、次の2.5層構造への再編を提言しています。

  1. 輪中会議シンポジウム(専門家会議) … 行政・研究者などから最新知見を共有し、コアを触発(年1回程度)
  2. 輪中地域会議 … 町会・NPO等の現場主体が経験・悩み・工夫を共有し、新たな活動を生む場
  3. 第2.5層(学習・啓発) … 初心者向け学習会と副読本など、裾野を広げる準備の場

キーワードは「共有する、深める、周知する、そして裾野を拡げる」。企画運営はNPO偏重から、広域ゼロメートル市街地協議会(町会・区・研究会等)への役割分担へ移していく方向です。地域会議では流域治水内水氾濫など、共通の最新情報の共有が重視されています。

行政・河川管理の最前線

1. 流域治水(荒川下流河川事務所)

気候変動に伴う水災害の激甚化・頻発化を踏まえ、従来の治水から流域治水へ転換が進んでいます。国・都道府県・市区町村、地域住民・企業など、流域のあらゆる関係者が協働し、総合的・多層的に治水対策を行う考え方です。

英語では「River Basin Disaster Resilience and Sustainability by All」。ハード・ソフトの継続投資に加え、平時の水辺活用(かわまちづくり)と高台まちづくりの両立も掲げられています。2024年は荒川放水路通水100年の節目です。

2. 葛飾区の浸水対応型建築と広域避難

  • 浸水対応型拠点建築物等普及事業補助金(2022年10月〜)… 集合住宅・大規模小売等の新設・改修で、停電対策や避難スペース整備を補助。公共施設に続き民間誘導を本格化
  • 広域避難… 首都圏で行政が確保すべき広域避難先の概数は約74万人。東京都は複数法人・施設と協定し10万人超を確保
  • ハザードマップ説明会、避難ガイド、町会向け出前講座を展開

3. 京成本線荒川橋梁部の水防

京成本線荒川橋梁の架替事業は長期事業です。完了までの間、線路部ではパラペット未設置区間への対応が必要となり、区は大型止水板+覆工板による短時間(おおむね2時間以内)の水防へ移行。夜間訓練も実施しています。

町会レベルの実践例

西新小岩五丁目|垂直避難と防災まちづくり構想

約1,800世帯の密集した下町です。令和元年台風19号時の避難所運営の経験を踏まえ、マンション3棟と区・町会の三者契約で垂直避難(約500人)を確保。「防災生活道路・建物不燃化・公園広場の確保」を柱とする防災まちづくり構想を区へ提出しました。モンチッチ公園を拡張し、浸水・親水・避難・防災倉庫を兼ねた広場としても整備しています。

東新小岩七丁目|共助アプリと日々の備え

共助アプリ「天サイ!まなぶくんⅡ」の開発に参画し、町会一体で防災意識の醸成に取り組んでいます。予見できる水害に対し、「今こそ学びの時、備えの時」と位置づけています。

新小岩北地区連合町会|ボート訓練と表彰

中川でのボート操艇・物資搬送訓練など、ゼロメートル市街地ならではの大規模水害訓練を実施。東京都消防局や総務省関連の表彰実績もあります。

教育・次世代継承と広域連携

  • 出前授業の副読本化… 10年超の資料を再編集し、小学生と家庭で使える冊子に。元部員の中高生・大学生が企画編集・講師に参加
  • 家庭・保育園向け学習… 「親子で語り合う大雨時の避難」ワークシート、保育園での講演など
  • 被災地・上流域との交流… 東日本大震災被災地や、荒川上中流域(都幾川・東松山など台風19号被災地)の視察を継続

注視しているハード事業

地域で特に関心が高いインフラ計画は次のとおりです。vol.28時点ではいずれも具体化途上であり、NPOは情報収集と地域への共有を続けています。

  • 新小岩公園の高台化
  • 蔵前橋通りと堤防道路の平面交差+緩傾斜堤防
  • 西新小岩3丁目の高規格堤防(スーパー堤防)

これからの方向性

  1. 流域治水・内水氾濫など最新情報を、地元でわかりやすく共有する
  2. 浸水対応型市街地・建築・垂直避難・広域避難を、公共から民間・住宅単位へ多層化する
  3. 共助アプリ・副読本・出前授業で自助・共助の実効性を高め、若者への継承を加速する
  4. 高齢化するNPO自身のBCPを整え、町会・研究者・行政と役割分担して持続性を確保する
  5. 「災害リスクと賢く共生した親水都市」として、安全と水辺の魅力を両立し、モデルとして発信する

まとめ

『街づくりニュース』vol.28は、ゼロメートルの下町で20年かけて育てた住民・専門家・行政の協働を総括する一冊です。コロナ後の次の10年に向け、輪中会議の再編、民間まで含む浸水対応建築、共助のデジタル化、次世代継承、流域全体での治水がキーワードとなっています。

新小岩・葛飾の水害対策や防災まちづくりに関心のある方は、上部のPDF本編で詳細をご確認ください。

関連情報

  • 団体名:特定非営利活動法人 ア!安全・快適街づくり
  • 所在地:東京都葛飾区西新小岩三丁目5番1号
  • 公式サイト:http://www.banktown.org/

本記事は『NPOア!安全・快適街づくりニュース vol.28』の内容をもとに、Web向けに再構成したものです。詳細はPDFでご確認ください。

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