広域ゼロメートル市街地の抱える浸水リスクを知ろう! ~浸水~

広域ゼロメートル市街地の抱える浸水リスクを知ろう! ~浸水~

ここでは、東京東部のゼロメートル地帯に広がる広域な市街地(以下、広域ゼロメートル市街地)の抱えている水害リスクについて説明します。

■ ゼロメートル地帯

 ゼロメートル地帯とは?

 海水は月の引力により満潮になったり、干潮になったりします。潮干狩りが始まる3月のお彼岸頃の干・満潮位が1年の最大値で、干潮時には遠くまで砂浜になるのでアサリ採りに行く人が多いわけです。

 この干潮時の海水面の高さが、荒川の水位を図る基準高さの0m(これを専門用語でA.P±0mという)とほぼ同じ高さです。

地盤高がA.P±0mより低いところに住んでいる人は、堤防がなければ何時も海水の中で生活していることになります。

 また、東京湾の満潮時の海水面の高さは干潮時より約2m高くなります。従って、地盤の高さがA.P±0mからA.P+2mの範囲に住んでいる人は、1年の内大半の時間は海水の中で生活し、干潮になると陸地になり自由に走り回れる蟹さんのような生活をしていることになります。

0m地帯とは地盤高がA.P±0m前後の地域一帯を表す言葉です。この地域に住む人は堤防がなければ住んでいられないことを認識している必要があります。このことを認識していれば、一旦事があったときの避難活動に素早く対応でき、被害を最小限に食い止めることが出来ます。


 

なぜゼロメートル地帯になったのか?

明治時代以降、東京東部地域では、近代化に伴う地下水のくみ上げによって地盤沈下が進行しました。最大で4.5mも沈下した地域があります。戦後、地盤沈下を考慮しない市街化、過密化が進行した。その結果、海抜ゼロメートル以下の広域な市街地(「広域ゼロメートル市街地」)が形成されました。

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(東京都建設局資料より)

 

■ 東京東部低地帯

東京東部の低地帯の概要

東京の東部低地帯には245万人を超える人々が生活しています。このうち、荒川と江戸川に囲まれた地域には半分の120万人が暮らしています。東部低地帯は下の図の斜線と網掛けの地域です。

東京の低地帯の内、荒川と江戸川に囲まれた地域には120万の人達が暮らしています。東部低地帯の地盤の高さは下の図のようになっています。
 濃い赤色の部分が0メートル地帯で、濃いピンク色満潮面以下の地域です。


(東京都建設局河川部発行パンフレット「低地帯の地盤高平面図」より引用)

 

当NPOが位置している「中川左岸」(上平井水門より下流)一帯の堤内地(民地側)は今、下の写真のようになっています。

中川・JR総武線橋梁から上平井水門方向(右側がその町並み)を写した写真

中川・JR総武線橋梁から上平井水門方向(右側がその町並み)を写した写真

また、高さは下の絵のようになっています。

(東京都建設局河川部発行パンフレット「地盤高概念図」荒川から新中川区間を拡大)

 

さらに、荒川堤と中川左岸堤の高さ、そして中川左岸の堤内地地盤の高さは下の写真(水面模式図)のようになっています。

また、中川沿いの江戸川区松島地区の町並みは今、下の写真のようになっています。
このように、中川左岸一体は普段、堤防がなければ水の底に沈んでしまう街なのです。
堤防によって私たちは毎日を、安心して安全に住み続けられているといえます。
しかし、堤防は、大雨や台風による川の増水によって、壊れる可能性もなくはありません。

荒川河口付近から江戸川区松島付近を移した写真

 

荒川河口付近から江戸川区松島付近を移した写真

 

もし大規模水害が発生すると…

本NPOが位置する葛飾区では、荒川や江戸川が200年に一度の大雨で氾濫した場合、葛飾区の大部分が浸水することになります。最大で約5mの浸水となるため、2階まで水に浸かる地域もあります。川の水面が街の事案よりも高いゼロメートル地帯のため、自然には水が排水されず、ポンプで排水する必要があります。そのため、浸水が継続する時間は2週間以上と想定されています。

 

 

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葛飾区荒川洪水ハザードマップ

 

また、浸水した地域では、2週間以上、水道・電気・ガス・トイレが使えない可能性があります。マンションの高層階に留まって浸水から逃れた場合でも、水や食料が足りなくなったり、体調を崩したときに病院にはいけない等の困難が予想されます。

 

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水害発生時に浸水地域に留まると…

 

 現状では、このような広域ゼロメートル市街地の水害リスクに対して、社会的な解決策がない状況です。広域ゼロメートル市街地に位置する葛飾区新小岩北地区では、2006年頃から新小岩北地区連合町会、当NPO、大学等の専門家、葛飾区等、多様な主体が協働して、大規模水害に備えた先進的な取り組みを行っています。

 

 

 

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