活動の年次記録

平成18年活動報告 (地震で堤防が破れたら「あなた」ならどうしますか?)

平成18年8月15日

地震で堤防が破れたら「あなた」ならどうしますか?
―葛飾区西新小岩地区住民への説明会を開催-



上平井集会所に地元の皆さんが多数参加して盛況裏に終了(後方はNHK取材班)


 8月10日、葛飾区西新小岩3~5丁目の住民の皆さんを対象に、「地震で堤防が破れた時」と題する当NPOと地元町会共催の説明会が、西新小岩3丁目の上平井集会場で開催されました。


プロジェクターで解説をする石川理事長

 当日は週日の午後3時からという時間にもかかわらず、地元住民の皆さん40名余りを含む総数50人強の方々が集まり、会場に入りきれず扉の外から聴講される方も出るほどの大盛況で、この問題に対する地元の皆さんの関心深さを痛感した次第です。 会は地元3丁目町会長鈴木さんの挨拶で始まり、昨年のNPOの水位表示板の設置に引き続き、今年度中には葛飾区としても水位表示板を追加設置することに決まったことが報告されました。

 ついで、先に当NPOが内閣官房都市再生本部の委託を受けて開発した「水害・地震水害対策支援システム・市民の安全を守る君」について、その開発者である都市工学が専門の東京大学・加藤先生から開発意図の説明があり、従来都市防災について欠けていた地震水害から如何に市民を守るかという視点から、このシステムが開発された。更に、分かりやすいシステムに発展させて皆さんのお役に立てて行きたいとの発言がありました。
 引き続き、当日のメインテーマである「地震で堤防が破れた時」と題する講演が当NPOの石川理事長によって行われました。講演は最初に皆さんの住んでいるところは地下水の汲み上げによる地盤沈下のため、いまや海抜マイナス2-3メートルの土地になっていること、今は関東大震災級の地震にも耐えられる堤防に守られているとはいえ、もしこの堤防がなかったら干潮になってもお魚さんが泳ぐところに住んでいるということを認識しておいて欲しいとの発言に始まり、防災対策というものは過去の災害を教訓として、同じような災害が起こったとしてもそれに耐えられるような改良が常に行われていることが報告されました。
 しかしながら、人間のやることには常に「死角」があることをいくつかの実例を挙げて説明、特に直下型の地震では「想定外」のことが起こるのは、阪神・淡路大地震で高速道路が倒れたり、古くは新潟地震の際、液状化現象で4階建ての鉄筋コンクリートのアパートが土台ごと倒れたことからも明らかで、この地も安全な堤防に囲まれているからといって、万一堤防が破れたときに備えて、常に避難の準備はしておくことが必要であると指摘されました。
 次いで災害時の避難の手助けとなる「市民の安全を守る君」の概要説明に入り、地震水害の場合にはまず「生きてるだけで丸儲け」と考え避難することが第一で、このためには避難するための道路はどうなっているか、公共の建物や公園、民間の高い建物など避難できそうな場所は何処にあるのか、そこにはどれだけの人が避難できるのか、災害弱者としてのお年寄りの非難は可能なのか等々自分たちのおかれている環境を知っておくことが必要です。それらをデータベース化したのち、浸水シミューションを行い、ある地点で浸水が始まったとするとその後時間の経過と共に浸水地域がどのように拡がっていくのかを表示しています。ただし、現在のデーターは荒川下流河川事務所から提供された洪水によるオーバーフローの水の拡散状況を表したものであり、地震による堤防決壊時の浸水区域の広がりについては今後の研究が待たれます。

 新たな避難場所として例えば都河川中川左岸、葛飾区上平井橋付近(通称七曲り下流部)がスーパー堤防化された場合には、その地域の避難人口に対し、それを収容する人口が上回るようになるなどのモデルケースが示されました。このように、スーパー堤防による現代の輪中堤ができあがれば、一層安全な街となるが、そのためには住民の皆さんの協力と共に莫大なお金と時間がかかります。そこで、第1段階として新小岩公園をスーパー堤防化し、そこを防災拠点として、一時避難の中継基地とすることが考えられます。更に、もっと身近な緊急避難場所として、今後建設される新築ビルにより広い廊下やエレベーターホール、子供たちのプレイルームや談話室を設けさせ、それを緊急時の避難場所に当てることの見返りに、その部分の面積を容積率から除外したり、建物全体の容積率に特例を設けることで建設費の増加をカバーさせるなどの方策がとられることが期待されるとの提案がありました。
 最後に、皆さんが常日頃から集まって意見を出し合い、みんなで自分たちの避難の方法を考え出して欲しいこと、追ってこのためのワークショップを開催したいし、話し合いのための基礎データーは提供していきたいとの発言がありました。

 最後に当NPO徳倉副理事長から広域避難場所である新小岩公園は今のままでは安全な避難場所とはいえないので、スーパー堤防化した上で更に土盛して平らな土地とし、上部は公園・運動場、その下に駐車場を設けると共に、南北に抜けられる道路を設けることで安全な防災拠点とすることを考えていること、構想がまとまり次第皆さんにも提示するので賛同する方が多ければその方々と一緒に署名活動などを通じてその実現を働きかけていきたいとの発言があってこの日の会は成功裏に終了しました。
 末尾になりますが、この日の会の実現のために町会の皆さんに呼びかけていただいた鈴木町会長はじめ町会世話人の皆さんに感謝したいと思います。  なお、この日もNHKのスタッフが来場、会の模様を取材した他、会終了後も水位表示板前や地元の皆さんによる都河川中川左岸、葛飾区上平井橋付近(通称七曲り下流部)の堤防の見回りの様子などを熱心に取材していました。その結果はこれまでの取材と合わせて9月1日、防災の日の特集番組の一部に組み込まれるものと思われます。放送時間等については別報をご覧ください。

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