輪中会議とシンポジウム

河畔再生研究会

NPO「ア!安全・快適街づくり」の活動、河畔再生研究会で発表

河畔再生研究会討議状況

河畔再生研究会討議状況

 第5回河畔再生研究会が9月22日(木)午後3時から、千代田区一番町の財団法人リバーフロント整備センターで開催された。前回の研究会で、具体的な地区の活動状況を例に話し合ってみたい、と言うことから当NPOの石川理事長に依頼があったもの。河畔再生研究会は名称が示す通り、河川と沿川空間の在り方を、新しい観点から 研究し、安全や景観の維持向上と街の活性化に寄与しようとする研究会である。当日の出席者は国会議員、大学教授、都市計画研究者や国土交通省など、河川や街づくりの専門家16人。

 発表に先立って、石川理事長から当NPOの役割を次のように話した。
1.当NPOが取り組んでいるスーパー堤防の建設促進は今まで、国や自治体が行ってきたが、最近停滞している。当地域においては必要な事業なので、止むに止まれずNPOを立ち上げた。
2.従って、地元のスーパー堤防建設賛成の気運が盛り上がるように、国や自治体も積極的に参加して欲しい。

続いてパワーポイントを使って、「荒川以東におけるスーパー堤防と街づくり」と題して、NPO法人発足一年半の活動経過と目的を次の通り発表した。

第1章「スーパー堤防発案から現在まで」
第2章「スーパー堤防推進の課題と解決策」
第3章「NPO『あ!安全・快適街づくり』の役割」

第1章「スーパー堤防の発案から現在まで」

 スーパー堤防発想の原点として、昭和46年9月に発生した江戸川区新川西水門事故の原因と、わずか10分間の浸水状況の凄まじさに言及。大地震が発生しても堤防が壊れないスーパー堤防の必要性の観点から、地盤沈下の激しいこの地域を対象にした低地防災対策委員会の答申に触れた。ついで、
・阪神淡路大震災の人知を越えたエネルギィ?による惨状と、それに基づく対策
・前記答申のPRと実現への道程として、白鬚西地区防災計画素案の修正時に、荒川区に緩傾斜堤防採用を依頼し都市計画決定された。台東区のX橋(桜橋)計画時に取り付け護岸の緩傾斜堤防化を提案
・工場や倉庫街から快適な緩傾斜堤防のある街への変身(大川端、箱崎などの経緯と、スーパー堤防への展開などを各種写真で説明

第2章「スーパー堤防推進の課題と解決策」

・スーパー堤防の優先施行地域の認定および、スーパー堤防建設と街づくり機運の醸成策など隅田川スーパー堤防の進捗状況と比較して、荒川・中川左岸(荒川以東地域)のスーパー堤防整備の遅れに言及
[課題1]
 街づくり機運の醸成困難な実態として
・大規模な工場跡地がない
・戸建て住宅が連站しているので再開発機運がない
[課題2]
スーパー堤防の取組み方針の策定として
・街づくり機運がある箇所への手戻りを防止するという現行方針から
・新方針として、治水効果のある箇所の重点整備を優先する 
 次に、スーパー堤防建設工事には最低1haの更地が必要なことから、
 「スーパー堤防と街づくりの同時施行」のメリットに触れた。
 次に
・河川空間の資源効果について
1.スーパー堤防建設の地域への波及効果
2.河川管理者が行う施策
3.住環境の改善効果

・同時施行実現のために行う施策として
1.河川管理者は、優先度の高い地域のスーパー堤防の建設には、街づくりに積極的に関与する。
2.都市計画、街づくり部局は、戸建て居住者が街づくりに参加したくなるような、インセンティブ制度を確立する必要がある。 
3.同様に、街づくり事業の採算性をあげる制度を確立して、自治体が事業者になり易くする。また、三セクや民間が参入できる方策の検討をあげた。

・都市計画、街づくり関係部局が行う施策として
1.都市計画に「川を中心にした街づくり」の概念を取り入れる(容積率と街路幅員はリンク性が高い、一方大河川であってもその空間は容積率に反映していない現状を改める)。 
2.堤防道路のアンダー化(地下化)。
3.スーパー堤防と街づくりの同時施行を可能にする街づくり事業補助制度の確立(例、都市再生住宅補  助など)。

第3章 NPO「ア!安全・快適街づくり」の役割

[役割1]地元PR活動(低地帯とスーパー堤防の役割などのPR、街づくり機運の醸成)
[役割2]スーパー堤防と区画整理等の同時施行手法の勉強会の実施
[役割3]地元住民と権利者等に対する情報提供、意向や要望の聴取
[役割4]街づくり事業者の発掘と資金計画の支援
[役割5]事業に先行して必要な事務経費の調達

河畔再生研究会への要望として
1.NPOア!安全・快適街づくりの活動に支援を要請
2.戸建て住宅地域を集合化して、公開空地等を設ける検討をしているが、河畔を河川の資源として、後世 に残すために必要な河川沿いの公開空地の広さ、形態等について、この研究会でも議論され成案が出 来たらご教示をお願いしたい。
 最後に、11月5日(水)の「川と街づくり」のシンポジウムチラシを配付して、参加を要請した。

[主な質問、意見交換]

1.小規模工場跡地がスーパー堤防予定地なのにマンション化になるが。
 ・スーパー堤防地域として地元に活用してもらうには、スーパー堤防の必要性を理解して貰う努力が必要。
2.新川水門の事故が、切れない堤防の発端になった。
3.大河川という空間があっても、その空間は河川沿いの容積率に反映されていないが。
・豊かな都市生活を送る為に川が必要な施設として認識されていないからそのようなことが起こるので、法律を変えなくても現行法の中で出来るはずだ。
4.土地付き住宅に将来とも住みたい人と、共同建て替え希望者の人が土地交換出来るようにすればよい。
5.平成16年度の300億円の「街づくり基金」を要求中と聞くが、これなどを利用して、当NPOの必要事務 経費に当てられれば。
6.対象住民にはスーパー堤防建設の目的を以下の3つで提案したらどうか。
 ・大地震発生による危険防止 ・面整備手法の法律や運用方法 ・豊かな生活の実現
7.マンション等の開発をスーパー堤防を前提にした計画にしてもらうには、今のままでは時期的に遅く、手の打ちようがない。河川計画か都市計画で対象地域に網をかけることはできないだろうか。
 ・区の都市計画のマスタープランに入れてもらえれば、都市計画審議会にかかり河川管理者が決定することができる。
8.生活者対策も含め、地元住民への説明が十分である程、結果として区画整理等の費用が安くなる傾向にある。
 ・地元住民にはスーパー堤防だけでなく、完成後の絵、特に住宅街の見違えるような様子を見せることが大切。

 以上で勉強は全て終了した。次回は11月11日開催の予定。           伊東春海記

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