総会・評議会の記録

平成24年度総会

平成24年7月13日

平成24年度定時総会結果!

~恒例の講演には多数の中学生も参加~

 平成24年度当NPOの総会は6月23日、土曜日に昨年と同じ新小岩地区センターの4階ホールで開催され、上平井中学生の参加もあり、立ち見が出るほどの盛会でした。予定された議案は全て提案通り承認されました。

 恒例となっている総会に先立つ講演は、今年は葛飾区郷土と天文の博物館の博物館専門調査員、伊藤綾乃氏による「水と産業と文化財」と題する講演でした。

 この講演で伊藤氏は我々の住んでいる葛飾区は利根川水系に属しており、荒川、中川、江戸川に囲まれ、水とは深いつながりを持っているが、その歴史においてプラスとマイナスの面を持っていることを指摘されました。

 マイナス面は洪水のもたらす「水害」で、その最大のものは1947年9月のカスリーン台風によりもたらされた「水害」でしたが、それが現在の治水事業に多くの教訓をもたらし、堤防の強化や排水ポンプ施設の拡充につながったといえます。

 他方プラス面としては水を利用した江戸小紋に代表される染織産業が発展したことであり、それを支えた「ふのり」づくりも葛飾区を代表する産業となったことです。加えて人々に水に親しむ機会を与え、今日多くの親水公園として生活に潤いを与えることになったことも指摘されました。

 最後に、当NPOの働きかけによって平成23年度に新たに葛飾区の登録有形文化財として登録された東京都第五建設事務所敷地内の古井戸について触れ、戦後経済の発展期に地下水の大量くみ上げにより生じた地盤沈下によって地表から2.2mも浮き上がってしまった古井戸が「地盤沈下の生き証人」として保存されることになったことを紹介されました。


東京都第五建設事務所の古井戸

 中学生からカスリーン台風の災害時の様子などについて質問がありました。これに対し当NPO理事で体験者でもある東新小岩七丁目の中川町会長から当時は高い建物もなく住民は屋根の上に避難し、水が引くまで数週間を過ごさざるを得なかったこと、食料品など救援物資の受け取りに筏を作って取りに行ったこと等の苦労談を伺うことができました。


中学生の質問に答える中川町会長

 総会では冒頭に青山元東京都副知事からの祝辞が紹介された後、石川理事長から「新しい公共を目指して」と題する挨拶がありました。

 最初に理事長は当NPOが「どんな想定外の状況でも命はまもろう」そして「東京一番の街へ」をスローガンに10年間活動してきたこと、この間行政では出来ないが「NPO」ならできるとして、破堤のシミュレーションの検討を行ったり、水位表示板を設置したり、地元の皆さんと一体になって避難方法を検討するためのワークショップを開催したり、遠距離避難実験やボートによる避難訓練を実施したり、更には行政にもその活動への参加を求め、2区長参加のシンポジウムの開催や国・都・区の三層行政機関同席の勉強会の開催などをおこなってきたことを報告しました。次いでこれらの活動を踏まえて今年は「死なない術は親から子へ」を目標に、葛飾区との協働事業で地震時の心配ごとの第1位、家族の安否確認方法について親子で語り合い予め確認し合うことを地元小中学校を対象に行うことを計画していること、さらに広域ゼロメートル市街地研究会メンバーが中心となって水害に強い街のあるべき姿を検討していること、その中で個室型の老人ホームを3階以上に設置することや、子育てしやすい街づくりなど身近な問題を取り上げるよう要望した。最後にNPOの基盤強化のため少額寄付に対する優遇税制の導入を要望して挨拶を締めくくりました。

 次いで議案の説明と質疑応答が行われ、最終的に全ての議案が提案通り承認されました。この間に提起された質問とそれに対する回答を要約すると次の通りです。


質疑応答に答える先生

質問1:
  国、東京都、葛飾区という三つの行政体が地元民と一つの問題について話し合う勉強会が立ちあげられたいきさつとその成果如何?
回答:
  葛飾区新小岩地区は実質的に国の管理する荒川、東京都の管理する中川、新中川に囲まれており、この地区の治水対策を論ずるためには国、東京都、葛飾区が一体となって地元民と話し合う必要があったこと、そこで当NPOが仲立ちとなり、葛飾区と共同事務局となって、若手研究者の参加も求めて勉強会を持つことになった。成果としては、葛飾区のマスタープランに高台設置が取り入れられたり、また、今後の課題として挙げられた耐水街づくりと緊急避難先の高台の創設を葛飾区から東大への委託研究で行い、更に、近隣関係継続計画と輪中会議の立ち上げを当NPO、葛飾区、新小岩北地区連合町会、広域ゼロメートル市街地研究会、日本都市計画家協会が共同で立ち上げた「協議会」で、東京都の新しい公共支援事業から助成を受けて検討することになったことである。

質問2:
 「新しい公共」とは何かを分かりやすく説明してほしい。
回答:
  近年従来官が担ってきた業務のうち、民間に任せた方が効率よく実現出来ることが判明してきた業務を、非営利活動を行っているNPOに委託する動きが出てきた。この担い手が「新しい公共」で、その中核をなすのがNPOである。

質問3:
  東新小岩7丁目町会はボート訓練や地域外への避難訓練などを町会として実施しているが、もっと多くの地域内の組織の参加が必要ではないか? 回答:
 その通りでより多くの地縁組織が参加することが望ましく、「協議会」では多くの地縁組織が集まって「輪中会議」を立ち上げることを一つの目的にしている。

質問4:
 近年スマホやI-Pad等の小型情報端末が普及してきている。これらの端末を利用した水害情報の提供などが可能になっているのではないか? 回答:
 小型情報端末からの情報を待って行動しようと考えるのはよいが、情報が迅速・正確に伝えられないと情報待ちの間に被災する恐れも生ずることに注意を喚起しておきたい。「協議会」ではスマホやタブレット端末に避難ルートの状況(例えば自分の進む道の前方の洪水の水位がどのぐらいか)
を示すような情報が提供できるツールの開発を進めており、年度内に実用化の目途をつけるよう努力している。

質問5:
 9月9日(救急の日)にゴムボートを使ったイベントがあると聞いたが、どんな内容か?
回答:
 東京都が募集している「地域の底力再生事業」に新小岩北地区連合町会が応募して実施するもので、9月9日に中川の上平井水門の上流でゴムボートや小・中学校に配備されている組み立て式ボートを使って避難訓練を行う。本田消防署上平井出張所の指導のもと各町会にあるゴムボートや小中学校の組み立て式ボートが問題なく使用できるか確認すると共にそれらボートを使って、乗・操・下船の訓練を行う。


ゴムボート使用の避難訓練(平成19年11月・葛西臨海公園東なぎさ)

質問6:
 モンチッチの工場跡地を区が取得してその利用法について近々公聴会を開くと聞いた。西新小岩5丁目は緊急避難場所になる高台がないので、避難場所になる高台化を望むがNPOはどう考えるか。
回答:
モンチッチの工場跡地は堤防へのアクセスが限られており、直ちにスーパー堤防用地にはなりにくい。高台にするには近隣との関係に配慮する必要がある。

 総会終了後40名余りの方が参加してささやかな懇親会を開催しました。懇親会には来賓rとしておいでになった葛飾区の久野副区長や波多野荒川下流河川事務所長も参加されました。特に波多野所長からは東日本大震災の際に内閣府の防災担当の一員として首相官邸の危機管理センターで情報の収集と救援対策の策定・実施に当たり、翌日には自衛隊のヘリで宮城県の現地に飛び、第一線で救援・救助体制の構築と運営に当たった際の苦労話のご披露があり、特に今回の震災でなくなった方の9割が津波による溺死であったこと、津波に対する早期避難が行われたところではお亡くなりになった方が少なかったことは今後の大きな教訓になったとのご指摘が印象的でした。

 当NPOは今年度も協議会の一員としての活動や、葛飾区との協働事業、新小岩北地区連合町会の実施する「地域の底力再生事業」の支援など盛りだくさんの活動が予定されています。皆様方の一層のご支援を賜りますと共に、新しい会員として参加されるようお願い申し上げます。

以上。

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